坪田まりこの就職塾2011

坪田まりこの就職塾2011 第1回
2010採用動向をまずは見極めて“賢く”活動をはじめよう

はじめに

今年から就職活動をはじめるみなさん、はじめまして。坪田まり子と申します。みなさんの就職活動を応援するようになって、今年で早10年。ベテランの先生方に比べると、まだまだ“ひよこ”かもしれませんが、それでもひたすら一生懸命、私にできることを、みなさんにお伝えしてきたつもりです。この間、毎日のようにどこかの大学で講演や講義をしているおかげで、ここ数年、電車の中や街中で、

「もしや坪田先生ではありませんか?」

って、学生のみなさんから声をかけられることが増えました。昨年のことだったか、子供を連れて、100円ショップで買い物をした際、レジの学生にそう声をかけられたときには、さすがに照れ笑いをしてしまいました。おそらくきりりとした“先生モード”ではなく、お得なものを買わなくっちゃ!という生活臭ただよう“母親モード”だったと思うからです(笑)。またつい先日は、駅ビルの中で、留学生の女子学生から、やはり声をかけられました。私の講演をお聞きになった後、しばらくご自分の将来のこと、ご家族のことで考えてみられたとのこと。立ち話ではありましたが、15分程度いろんなお話をして、また学内での再会を約束してお別れしました。それもこれも私にとっては、本当に嬉しいことで、継続して同じ仕事ができるということのありがたさを痛感しています。

また、この連載もおかげさまで5年目となりました。毎年多くの学生の皆様にご覧いただけること、そして少なからず、「いろんな本や情報の中で、一番、役にたった!」という嬉しい声を伺うことができ、“ヤッホー!!”と飛び上がりたいくらい嬉しく思う昨今です。そんなとき、つくづく思うことは、“私は本当に学生のみなさんが大好きなんだなあ”ってこと。

今年度もしっかりお役にたてるよう頑張ります。そのうち分かると思いますが、私は、ズバズバはっきり言うタイプです。だって、本当にみなさんに夢をかなえてほしいからです。最後まで頑張りぬいてほしいからです。この一年、あなたの納得のいくゴールまで、私も、みなさんとともに走ることを約束します。1年間、どうぞよろしくお願いします。

2010の採用動向

“厳しい女子、理系も苦戦”という記事が何度も出ました。みなさんはこれから就職活動を向かえるお立場として、そんな情報や先輩からの話をどんな風に受け止めていらしたでしょうか。

景気悪化による企業の採用抑制の影響で、5月の時点で内内定を受けた学生の数は、ご存知のようにかなり減少しました。もしかしたらこの7月の時点でも、まだまだ内内定を受けていない学生も多々いらっしゃるかもしれません。

当然、選考が厳しかったということです。一言で、売り手市場といわれた2009年度との違いを申し上げるならば、

「2009年度は面接で迷ったら“通す”。しかし2010年度は迷ったら“落とす”」

だと思います。

つまり、生半可な受け答えや態度では絶対に選考に残れないということ。企業側の視点で言えば、絶対に妥協はしないということでしょう。

中小企業でさえ、「本気でうちに入りたいのか」を厳しく見てきたようです。規模の大小を問わず、志望理由が弱いと絶対に無理。どこにでも使えそうな“優等生的”な志望理由は全くといっていいほど使い物にならなかったようです。まさに“量よりも質”重視。エントリーすら通過せず、「母数」段階でかなり絞込みをかけられました。

まさに短期集中型で、採用活動の終焉は早まり、大手は早々と採用を終了したようです。従って、秋採用を含めた通年採用は期待しないほうが良さそうとまでいわれています。

もちろんそれでも明るいニュースもあります。一部の大手企業が事実上の5月中に締め切る中でも、まだまだこれからがチャンスとみる新興企業もたくさんあります。人数も例年通りを採用する意向で、5月中旬以降に重点を置いて積極的に採用活動を進めた企業もあります。企業だけではなく、県警や公務員など、採用人数を増加したところもあります。経営悪化で安定志向が高まったこともあり、公務員人気が高まったからともいえるでしょう。首都圏1都3県の2010年春の大卒採用計画も、2009年春の実績に比べ、24%増となる見通し。都道府県全体の18%増を上回る伸び率で、東京都は雇用情勢に配慮して5割増と大幅に増やすほか、埼玉、千葉両県も団塊世代などの定年退職者の補充を中心に、2割前後増員とのこと。しかし神奈川県は厳しい財政事情を重視し、15%削減とのことも発表されています。

こんな状況の中、あなたたちはどんな気持ちで就職活動を見つめていますか?やる気が出ない人もいらっしゃるかもしれませんが、その反対、やるしかない!!と思う学生もいらっしゃることでしょう。

私は思います。そう、やるしかない!やりきるしかない!!と。そのためにも、この時点で、みなさんにはっきりしていただきたいことがあります。

“卒業までに絶対に内定をとりたいか”
“晴れて正社員の地位を獲得してから卒業したいか”
それとも、
“あんまり厳しかったら、留年または進学するか”
“フリーターという選択肢もあり”
か、です。

人によって価値観はさまざま。さらに、結婚同様に、本人の意思のみならず、ご家族のあなたに対する期待や思いなどいろんな要素が含まれて、選択肢は限りなくあると思います。

しかし、昔の若者には、大学を卒業した後の選択肢はほぼ一つしかなかったはず。大学を問わず、学生という身分を終了したら自立をすることが当たり前の時代であったように思います。大人になるということは、自分の力で働くこと、親から自立をすることが当たり前と思っていた時代が、私が育ってきた高度成長期だったのかもしれません。

しかし、今は世の中も考え方も様変わりしました。正社員にならなくても、働くところはたくさんある。派遣社員にパート、アルバイトにフリーターなど、世の中には苦労しなくても収入を得ることのできる、カッコいい呼び名の仕事のスタイルがあった。そんなバブリーな時代もあったわけです。

私が講師デビューしたのは、まさに10年前の第一次就職氷河期といわれたとき。私が受け持ったのは、学卒未就職者と称される、卒業しても内定をとることのできなかった学生たちでした。東京都、静岡県、そして北海道の3ケ所で、学生と接してきました。そのときの、彼らの目を今でも決して忘れてはいません。みんな、良い子なのです。いかにも仕事が出来ないようなタイプでも、世間から受け入れがたいような雰囲気でもなかった。それなのになぜ就職できなかったか。それは新卒採用枠がゼロ、限りなくゼロに近かったからです。

この6月末。完全失業率が5.2%と発表されました。失業した非正規社員の増大、求職活動を余儀なくされている人生の先輩達がたくさんいるのです。この非正規社員という枠に入っている方々の中には、おそらく10年前に私が出逢った彼らの世代が含まれると考えます。“失われた10年”と呼ばれた日本経済に力のなかったとき、正社員採用の窓口がなかったからこそ、その多くの若者が、派遣社員の道をえらんだといわれています。

正社員でなくても、それでも仕事は山のようにあり、企業から重宝されたのはいうまでもありません。しかし、またもや経済不況になると、あれほど重宝された非正規社員をまずは切り捨てることからはじまります。正社員よりももしかしたら、頑張っていたはずの人たちが、非正規社員という、企業からみれば便利な立場、当人側からいえばあまりにも不安定な立場であっただけで、今、必死に求職活動をせざるをえない立場におかれているのです。

こんなふうに時代を読めば、あなたたちが今考えるべきこと、これからやるべきことが自ずと見えてくるのではないでしょうか。

そう、自分の力で幸せをつかまなければなりません。それも後回しにしたり、いつでもいいわけではなく、来年5月もしくは6月までにできるだけ納得のいく就職活動をして、早々に活動そのものを終えなければなりません。通年採用をあてにできないからです。あてにしなくても、周囲はゴールデンウイーク後に内定をもらえた、それなのに、自分だけは夏が過ぎても。。。という状況は、どれだけ心身に支障をきたすか、考えてみたらお分かりになることでしょう。

だからこそ”選ばれる学生”を目指して

この10年、買い手市場、売り手市場両方を見てきた私から言えること。それは、

“限りなく採用枠がゼロのときも、内定を採る学生はいた!”

ということ。

周囲の厳しさをよそに、間違いなく選ばれる学生はいつの時代も存在していたのです。

売り手市場のときも同じことがいえます。ほぼ全員が仮に就職できたとしても、自分の第一希望先に全員が入れたわけではないでしょう。第一志望に入った学生は、おそらく全体からみればごく一部。それ以外は、妥協したり、または新たな視点を養ったりして、方向性を修正していった方々だといえます。

だからこそ、景気がよかろうと悪かろうと、あなたたちが目指すものはたった一つ。

“絶対に、選ばれる学生になる”
このことしかないと思います。

私は来年6月までの間に、そのとき、その時期にやるべきこと、考えるべきことをこれからみなさんにお伝えしていこうと思っています。

ただ最近、残念なことに主体性を持って積極的に何事にも行動するという若者が少なくなったように思います。だからこそ、私に対しても、完璧な答えを求める学生がいらっしゃるのでしょう。完璧な答えを求めるという意味は、“苦労しないで、内定がとれる、とっておきの秘訣”を教えてほしいという学生のことです。

気持ちは分かりますが、それは無理。だって、企業は少しでもよりよい学生を採るために必死です。だからこそ、選ばれる側のあなたたちももっと本気に、真摯に、そして必死に戦いを挑むべきです。そうでないと、採用されたあとの人生のほうがもっと長い。そこから先、いかにして幸せを自分の力でつかむか。生きるということ、自分の力で生き抜き、幸せを自らつかむということは、そんな生易しいものではないと私は思うからです。

だけど、私は自分がこれまで生きてきた人生を振り返りつつ、そしてこの10年間、いろんな学生の成功体験、失敗体験と接してきた立場として、みなさんが少しでも迷うことなく、まっすぐ前進できるよう、全力を尽くすつもりでいます。

私の基本は、どんなときも直球でいどむこと。正攻法は、どんな人間の心をも必ずや動かすことができると信じているからです。

こんな私でよろしければ、ともに歩みましょう。そして勇気をもって、就職活動という戦いに挑みましょう。

来月は、早速、夏のインターンシップでチャンスをつかむためのポイントをお話します。一歩一歩やるべきことを、真剣にとらえ、真っ向勝負をしていきましょうね。

この一年、どうぞよろしくお願いします。

また来月、元気にお目にかかりましょう。

坪田まり子