坪田まりこの就職塾2011

坪田まりこの就職塾2011 第3回
自分をまず知ろう。”自分の売り”を探すための自己分析

はじめに

みなさん、こんにちは。
10月に入り、さらに本格的な就職ガイダンスがはじまります。どんな気分で迎えていらっしゃいますか?私も毎日のようにあちらこちらの大学で講演をしていますが、昨年以上に、たくさんの学生が参加をしてくださり、一生懸命私の話を聴いてくださっています。ニュースでもよく聞かれるのは、まだまだこの時期、4年生で就職先が決まっていない学生がかなりいるという厳しい現実。だからこそこれから就職活動を始めるみなさんは、不安を抱えてしまうのでしょう。景気は底上げと言われていますが、雇用問題ははるかに遅れて回復するのが世の常。残念ながら、2011年卒のあなたたちにとっても、まだまだ不透明さは続くと思うしかありません。
それでも見方を変えれば、大手は既に採用募集を締め切っているところが多いとしても、この時期、4年生向けの募集に集まってくださる企業がたくさんあるという事実。こんなに不況といわれているのに、なぜまだまだ学生を求めている企業がこんなにあるのでしょうか。実は、企業にとっても二極化している現象があります。、2010年卒の学生を対象に、”良い学生が採れた”という企業と”まだまだどこかに良い学生がいないだろうか”と学生を求めている企業もあるということです。
どうしてこんな偏りが出てくるかといえば、学生のみなさんが大手思考、安定志向そしてブランド志向??が多いために、周知の企業しか知らない、見ないということも原因にあるのではないかと思います。誰もが知っている有名な大手なら、あなたたちの行く末は本当に安心なのでしょうか。そんなことは絶対にないことを、みなさんは本当は分かっているはずですよね。
毎年毎年、就職活動のはじまりは、学生のみなさんの大手志向から始まるように感じています。それは仕方がないことだと素直に思います。誰もが憧れをもっていいし、初めて本格的に社会に出るみなさんにとって、大きな夢を持つことは人間のあり方として大切で有意義なことだと心から思っています。しかし、こんな不透明な時代を賢く生きるためには、短絡的な”夢見る夢子ちゃん、夢子君”ではダメ!堅実にそして着実に、自分の第一歩を踏み出すことが必要です。まずは企業選びを間違えないこと。そのためには企業研究をしっかりやり、自分の目で、自分の将来を単なる憧れではなく選ぶことができるようになるべきです。今回は、そんな企業研究の仕方、企業選びのポイントをお話します。

どんな仕事があるか知っていますか?

まず業種。毎年この時期の学生の大多数が、自分が就きたい業種がはっきりしていないようにお見受けします。それにも関わらず、憧れの企業はしっかりとあったりする。先ほども申し上げたように、人はそもそも誰もが知っていること、有名であるか否かに基準をあわせて物事を選択する思考がありますもの。就職活動でもテレビコマーシャルに頻繁に出てくる大企業や、商品や広告、または店舗が世の中に広く認知されているところしか、まず頭に浮かばない人が多いのは仕方のないことどだと思います。しかし、世の中にはもっとたくさんのいろんな企業があるのです。無名でも優良企業は多々存在しているし、超有名でも倒産するところもあります。だからこそ、みなさんは、企業イメージで志望先を固めるのではなく、世の中にどんな業種があるのかを調べることからはじめてほしいと思います。
会社という名前に就職するのではなく、”仕事に就いて”ほしいからです。仕事に就くという概念をきちんと持つことが出来れば、有名ブランどかそうでないかは、それほど関係ないと思いますがいかがでしょうか。仕事に就くためには、自分の適性を見極めて、その適正がその会社にぴったりと合っていることが大切です。そんな企業を選ぶことが、あなたにとって大きなやりがいのある社会生活を過ごすことができるかどうかの鍵になるはずです。

はじめに業界を知ろう

業種別に分類すると下記のようになります。
業種 内容 分野
金融 金を動かす 銀行/証券/保険/リース/クレジット/信販等
商社 モノを動かし事業を仲介する 総合商社
メーカー モノを作る 鉄鋼・金属・工業/化学・薬品/紙・繊維/ガラト・ゴム/機械・プラント/電子・電気機器/印刷・事務機器/輸送用機器/色本・生活用品 ・住宅等
流通・小売 モノを売る 百貨店/スーパーマーケト/家電量販店/コンビニエンスストア/ホームセンター/ドラッグストア等
情報 情報環境を作る マスコミ/通信・情報/ソフトウエア・情報処理など
サービス 便利・安心・楽しみを売る 不動産/運輸・物流/外食/ホテル・旅行/アミューズメントパーク/・レジャー/教育・医療・介護/人材・アウトソーシング/コンサルティング・調査/電力・ガス等
もちろんこれら以外にも、公務員、教師、実務家への道など、選択の幅はまだまだあります。
自分にとって、この中に興味のある分野がありますか?人によっては、これら業種のラインナップを見ても、”さっぱりイメージが沸かない”とうんざりする人もいらっしゃると思います。でもちょっと真剣に考えてみましょう。だって、誰のためでもなく、あなたのためですから!
  1. 自分が興味を持っていることは何か
  2. その自分の興味と結びつくのは、どの業種のどんな職種か
  3. 自分に向いている仕事は、どんな業種そしてどんな職種か
  4. 仕事で得たいことは何か
就職活動をまず自己分析から取り掛かるのは、こんな基本となることをまずしっかりと見つけることが大切だったからです。1を知るために、自分がこれまでどんなことに興味をもち、力を注いできたかがキーワードになるし、4はあなたの価値観です。大学生の現在まで、何に喜びややりがいを感じ、何をすることが嫌でしたか?やりがいや喜びという尺度からだけ捕らえるのではなく、「自分にとって嫌なこと・決してやりたくないこと」をもはっきりと見出すべきだと私は考えています。なぜならば、せっかく企業に就職してからも、3年未満の早期退職者が減りません。ということは、自分の適性など無視して、ただ憧れだけで会社選びをした方が多かったということにもなるでしょう。早期退職者の理由のほとんどがなんと自己都合。”こんなはずではなかった””自分が思っていた仕事と違う”などが挙げられますよ。こんな不透明で就職難の現在だからこそ、せっかく採用された職場を3年未満で離職することは絶対に避けたいものです。申し上げるまでもなく離職した後の再就職がもっと大変だからです。
さあ、自己分析がまだ終わっていないあなた。もしくは不十分だったかな?と思うみなさんは、もう一度、上記1と4にトライ。その上で2と3に目をむけられるといいと思います。ここまで着実にやることで、自分がどんな仕事をしたいかが明確になり、自分自身の姿と、選ぶべき仕事を結びつけることができまると思います。これが就職活動のいわば骨格となる部分ですから、大変でもじっくり腰をすえて考えてください。

分類表の活用の仕方

ところで、気に入った業種を見つけるためには、10月や年内いっぱい、選択の幅を絞り込まないで企業研究をなさることをお勧めします。合同企業説明会もあちらこちらで開かれますので、時間の許す限り、すべての分野のお話を一通りお聞きになってみてください。前記した分類表の文字だけを見たときには、どんな仕事をするか分からなくても、お話を聴けば、結構すんなりとイメージが沸いてくるはずですし、一回聴いただけでは分からなければ、同じ業種で、”別の企業”の話をもう一度だけ聴くことをお勧めします。こんどはしっかりイメージができ、面白そうだなと思うこともあるかもしれません。志望先を選ぶポイントの中に、社風や社員の雰囲気がかなり高位置についています。説明する人が変わるだけで、同じ業種でも、こんなにイメージが違うのかが分かり、きっと参考になると思いますから。
そして冬休み。見てきたこと、聴いてきたことをしっかり書き込んだメモをじっくりご覧ください。そのとき、共に必要になるメモが、自己分析です。自分の価値観、自分の得意なことそして決してやりたくないことのメモと比べてみると、自ずと自分に出来そうな・やれそうな・やってみたい業種・業界が分かってくるはずです。そこまで出来たら、今度は企業をどう絞り込むかですよね。

業種が見つかったら、企業への絞込みをどうするか

『業界地図』がお勧めです。本屋さんで購入しなくても、キャリアセンターや就職課にいけば必ず置いてあると思います。まずは、自分が決めた業種のページを開いてみましょう。その業種に関する企業名が、フローチャートで出てくるはずです。見れば一目瞭然!その業界に君臨しているトップ企業名から、中小企業まで主たる企業が分かります。
ここで間違ってほしくないのは、やはり大手だけを選ばないこと。学生にとって不透明な採用状況は、実は企業にとっても未だ不透明なのです。何名採用するかを毎年事前に(本来は8月頃には決まっていることが多い)決定しますが、2010年卒の学生に対しては選考途中でも企業の業績が変わったたために予定人数を大幅に変更するところがありました。現に、2011年度の採用も、企業によってはこの時期に及んでもまだ未定と回答しているところも決して少なくありません。こんな状況だからこそ、早くから採用情報を出せる大手だけを狙ってしまうと、競争倍率がうんと跳ね上がってしまい、結果として書類選考も厳しければ、面接は、”限りなく落とされるための面接”になってしまいます。
この『業界地図』でしっかりマークをつけてほしいのは、大企業と中規模の企業、そして小規模の企業それぞれ3つづつです。フローチャートに掲載されている全部の研究をするのは時間の関係で無理だと思いますので、大中小とそれぞれ三つづつ企業を選び、合計9社の個別研究をしてみましょう。同時に、その9社へは早速プレエントリーをしてくださいね。プレエントリーをすることが、個別企業説明会へ参加する条件になっているところが少なくありません。ぼんやりしていると、個別企業説明会へ参加することが出来ないのみならず、個別企業説明会へ参加をしたことをエントリー(書類を提出し、正式に応募の意思表示をすること)の条件にしているところも多いようです。だからこそ、『業界地図』でマークをつけた企業には、とりあえずプレエントリーをしておいてください。こんなところで出遅れてしまわないよう、くれぐれもご留意ください!!
ここから先は、じっくりとそれぞれの企業の話を聴くことはもちろん、OB・OG訪問もいいでしょう。リクルーター制度がある会社であれば、チャンスをいただける学生は積極的に活動されることをお勧めします。しかし全体を見渡しても、リクルーターとの面談はもちろんのこと、OB・OG訪問をしている学生はほんの一握りのようです。では、こんな機会に恵まれない方、もしくはこんな積極的な活動をするのがちょっと苦手な方はどうすればいいのでしょうか。
その手伝いをしてくれるのがニュースであり新聞です。何新聞を読めばいいとは申し上げません。どの新聞にも、必ず企業のこと、そして社会情勢が詳しく掲載されています。これまでぼんやりと見てきた方も、今日からは、マーカーを持って注意深く読んでみましょう。一面から最後まで目を皿のようにして読みましょうなどと申し上げるつもりは全くありません。まずは企業面の見出しを見て、自分が気になる業界または企業のニュースがあれば、まずマーカーで印をつけましょう。いきなり切り抜いてはだめですよ。理由は二つです。その裏にも貴重な情報があるかもしれないこと、そしてご家族がまだご覧になっていないかもしれないからです。いきなり切り取ったあと、夜、ご家族が手にされたときにはあちこち穴あきの新聞であった・・・そんなご家族の姿を想像しただけでも笑ってしまいますよね!!(笑)
あなたが興味のある企業に関することだけなく、現在の雇用情勢などにも着目しましょう。さらに全く興味のない業種、企業でも、新しい取り組みや目をひく記事が書いてあれば、そこにもマーカーで印をつけておいてください。
最終的にマーカーをつけたことを、項目別に仕分けして、ファイルしておきませんか?そうすれば、それらの一つ一つの企業のことが、企業が開示しているHPや案内だけでは分からないことをも情報としてゲットすることができます。そして興味のある業種や企業だけでなく、新しい取り組みや目を引いた記事も、「その他」など、別項目を作ってファイルしておいてください。後日きっと参考になると思います。自分では間違いのない3業種を選んだつもりでも、結果としてすべてが自分と合わないという結果になった際、それらが役にたつことがあるかもしれませんから。
本当にあなたに合った企業研究をするためには、ここまで取り組むことが必要なのですよ。ここまで真剣に考えるからこそ、エントリーシートや面接で志望動機がきちんと書けるそして述べることができるのだと考えています。

まとめ

「働く」ということの意味をもう一度考えてみましょう。それは大学を卒業した後、憧れの企業に就職することではなく、自分が決めた興味のある商品やサービスに関わることで、自分自身が”社会貢献をすること”なのではないでしょうか。単なる自立という意味だけでなく、人生80年以上の今、これからをどう生きていきたいかをしっかり考えてみてください。これから先の長い長いあなたの未来。自分のやりがいがどこにあるのか、その答えを、しっかり自分とそして企業研究と向き合って考えてみてください。人は一人で生きてけるものではありません。普段の生活もそうですが、社会生活においても、人からそして世の中から感謝されるようなそんな仕事に携わることが出来れば、”大きな喜びとやりがい”をきっともてると私は思っています。
ところで、今回決めた3種類、3業種が、この先決して迷わない企業になるかといえば人によってはそうではありません。話を聴けばきくほど、選んだ軸がブレてくることも当然です。そこで嘆く必要はまったくありません。そんな気持ちになるということは、企業への価値観がしっかり見定められるようになった証だと思います。その”なんとなく分かり始めた”という漠然とした気持ちが、新たな企業を発見できる”気づき”になると思いますから。企業を選ぶということは、簡単なことではありません。これまでアルバイトしか社会との接点がなかったあなたたちですもの。企業の本質など、目に見えないことのほうがほとんどです。
 ”一度業種を決めたらそれが絶対”ではなく、柔軟に対応する知恵を身につけてくださいね。誰のためでもなくあなたのための人生だからです。憧れだけで企業を選ぶことなく、手堅いチャンスを自分の力で選択してほしいと願っています。
いよいよ自分の体力とマメさとの戦いに入ります。学内ガイダンスで話を聴くだけで、分かった気にならないこと!そのことをどうかお忘れなく。
私はこの時期、本当にどこかの大学で講演や講義活動をしている毎日です。読者のみなさん、そんな私に気がついたらどうか声をかけてください。それが私のやりがい、そして一番の喜びですから!!
それではまた来月お目にかかりましょう。

坪田まり子