坪田まりこの就職塾2011
坪田まりこの就職塾2011 第12回
第12回「2011”選ばれる人になる大作戦”総まとめとこれから」
はじめに
みなさん、こんにちは。
昨年6月からはじまった私の就職塾2011も、早いものでいよいよ今回が最終回となりました。みなさんのお役にたてるべく、いろんな角度から良いこと、悪いこと、考えるべきことなどを率直に言葉にしお伝えしてきたつもりですが、いかがでしたでしょうか。
以前お話したかどうか。私はこの8年、大学生協東京インターカレッジコープ様にて、
「自己PR向上特訓講座」を年に3回開講しています。厳密にいえば4回。まず8月に「就職活動スタードダッシュ講座」という「自己PR向上特訓講座」の前章編があります。早々と就職活動について考えたい学生、または絶対に就職先を妥協したくない、夢を実現したいとすごくアグレッシブな考えを持っている学生が参加をしてくださるのがこの夏の講座です。
これらの講座も然り、こちらの執筆活動も然り、私はいつでもニュートラルな位置にたっているつもりです。その場その場で、今必要なこと、やらなければならないことに速やかにとりかかる緊張感をもっていると自負しています。だからこそ、言葉を飾らず、良いこと、悪いことをもはっきり申し上げるスタンスですので、この11回の連載をずっとご覧くださった方の中には”何もそこまで言わなくてもいいじゃない”って思った方もいらっしゃるかもしれません。しかし、なぜ率直に申し上げてきたか分かっていただけますか?企業はなぜ採用するつもりもないのに、学生のみなさんと笑顔で接するのかを考えていただけばその理由をご理解いただけるのではないかと思います。
企業は、採用しない学生にも、これからもその企業のファンであってほしいと考えているからです。もっと言えば、採用しなかったあとも、その企業に対し悪い印象をもってほしくない、これからもみなさんに、その企業の商品を多々購入する"消費者であってほしいと当然のことながら考えているからです。
その証拠に、ときどき学生に言われますが、
「今日の面接官、すっごく親切で、私の話を最後まで笑顔で聞いてくださいました。だから絶対今日の面接はうまくいったと確信していたのに、なぜだかその面接で落とされてしまいました。。。」
「あなたのような方をぜひ採用したい、と固い握手までしてくださったのに、面接は通過しなかった。。。」
などという切ない言葉の数々。。。
ここから考えても、上記企業側のスタンスが分かっていただけると思います。基本的には、採用しない学生に対してこそ、企業は親切で優しいのだと思います。だから私はその反対。
大きなお世話かもしれません。みなさんは憂鬱に思われたかもしれませんが、いいものは良い、悪いものは悪いと率直にはっきりとこの連載を通して申し上げてきたはずです。それはただ一つの思いからです。
みなさんの”心が元気”でいてほしいから。その上で最後まで頑張りぬいてほしいから。
体が健康であることは、もちろん大切なことです。しかし、心が落ち込んだり不健康になると、体はどこも悪くないのに元気が出なくなったりすることもあります。だから、みなさんが不必要に面接でこれ以上辛い思いをしなくていいように、面接官の目線ではっきりとお伝えしてきたつもりです。心が元気であれば、まだまだこの誰だって苦しい状況を乗り越えることができます。企業は、そんな忍耐と主体性をもった学生を求めているのですから、自ずとその先が近づいてくるはずです。
最終回の今回も、今まで以上に率直にお話しようと思います。少しでもみなさんの現状打破のきっかけになれば幸いです。
気持ちだけ奮い立たせてもダメ
リクルートスーツではありましたが、ズボンは折り目も消え、ちょっとヨレヨレ。髪の毛も伸びすぎて、おまけにネクタイは弛んでいます。目には活き活きとした光がなく、疲れが丸見えです。
そんな彼がリクルートカバンから出したものが、まず企業の資料のようなもの。おそらく時間的に、これから面接に向かうという状況のようでした。しばらくその資料を読み、次にため息をつくようにしてカバンから取り出したのが一冊の単行本。カバーがついていませんでしたので、タイトルが丸見えでした。ジャンルは、悩んだとき・落ち込んだときに読む本、そんなタイトルのようでした。
おそらくその男子学生、暗いトンネルから抜け出せない状況なんだろうと拝察しました。自分のやる気を奮い立たせるために、そのような本を手に取りたくなる気持ち、読みたくなる気持ち、私にはよく分かります。
しかしそれだけで仮に元気になったとしても、まだほかにやるべきことがあるのです。おそらく彼が、内定がまだ採れていないかもしれない原因は、気持ちの落ち込みだけでなく、彼の雰囲気にあるからだと私は思います。
お金がかかるけど、まずリクルートスーツはすぐにクリニングに出すこと。伸すぎたボサボサの髪の毛はカットして、精悍なイメージになること。襟元で弛んでいるのは、結び方の問題だけでなく、ネクタイ自身が少しくたびれているからですから、新調すべきであること。さらに肝心なのは、目の光。私があんなりしげしげと彼を見ていたからか、ふと彼は顔をあげ、私としっかり目が合いました。見つめすぎる私に講義するような目線であればまだしも、どんよりした眼差しで私をボーっとご覧になっただけだったように思います。
この男子学生の様子が、もしもあなたにとって人ごとではないならば、二つのことを同時に解決することが、トンネルから抜け出す唯一の秘訣だと私は思います。
一つは、今現在の自分をしっかり見直すこと
もう一つは心を健やかに保つことです。
彼の場合には、自分自身の印象(=社会性を感じさせる雰囲気がまず大切なのです!)をまったく見直さないのまま、心を強くする本を読んでいらっしゃるご様子。仮に、その日目的地である企業に着いたときには、その本を何度も読んだことで、心は少し元気になっていたとしても、面接でまた落ち込むことになることが目に見えています。
厳選採用だからこそ、ここまで採用が厳しい昨今では、大企業でなくても、印象が悪い、それだけで、一次面接を通過することが困難だからです。
一つ目の、自分を見直すという内容には、さらに二つの観点が必要です。一つは、志望動機や自己PRを見直すこと。もう一つは自分の印象を社会性がある雰囲気に近づける工夫をすることです。
私が申し上げても何の信憑性もないかもしれませんが、よろしければこちらの大学生協のサイトに連載している『坪田まり子の就職塾2011』を改めて第一回から復習をしてみてください。
もしくはこの4月に出版した「面接で『特A』をとる!」をご覧ください。自分の見直し方と、心のケアを同時に解決してさしあげたいと願い、誠心誠意心こめて書いたこちらの連載そして本です。何らかのヒントが見えてくるかもしれません。
身だしなみにはくれぐれも要注意
昨年のこと。某有名大学(名実共に超一流)の男子学生から相談を受けました。うまくいかなくて悩んでいる、どうすればこの状況を抜け出せるか、というものでした。実はその学生は、以前、私の学内講座を受講してくださっていたので、会った瞬間びっくりしました。最初にお目にかかったときの精悍さ、爽やかさが全く消えていたからです。目つきも、下から上をみるような上目遣い。これも以前の彼にはなかった目つきでした。思わず、「疲れているみたいですね」って申し上げたら、「疲れてもいるけど、やる気がなくなってきちゃって。。。」という返事がかえってきました。
最初の頃はまだ順調だったそうです。4月末には早々と内々定をもらったようですが、本命ではないので行きたくないと生意気な辞退をしたそうです。いつの頃からか、面接が空回りするようになり、気がつけばほとんど一次面接を通過しなくなったとのこと。
彼は自分の自己PRや志望動機に問題があると考え、私から的確なアドバイスが欲しいということでした。しかし、私は、内定が取れないのは、それ以前の問題だと思いました。
洋服がくたびれていること、髪の毛が伸びすぎていること、おまけに午前中面接だったというのに無精ひげすらうっすら生えていること、ネクタイの胸元の一番見えるところにハッキリ見えるシミがついていることに加え、なんと手の爪の中に黒い垢が見えたこと、etc.。
これらをはっきり指摘したところ、本人はびっくりした様子でした、それらに全く気がついていなかったとのこと。
自分では完璧にしているつもりでも、身だしなみだけは客観的目線をもって確認することが大切です。朝出かける前には、必ず鏡の前にたって、面接官の目線で自分自身をチェックしてみましょう。そして自分自身に問いかけていただけますか? 「私が面接官なら、今、目の前の鏡に映っている自分を採用するだろうか??」と。 きっと見えてくるものがあるはずです。
第一印象を疎かにすることが、良い結果をだせないことにつながっていると私は思います。第一印象から、”仕事が始まっている”からです。あなたが今、もしも営業マンならば、社会の上下関係や人間関係において、そのだらしない雰囲気が、相手に信頼感を与えることができません。ましてや就職活動でそんな自分を無意識にさらしだすとしたら、その瞬間あなたの仕事能力を疑われても仕方がありません。どうかこの点にくれぐれもご留意ください。
話し方の印象は大丈夫ですか
中身が充実していること、信憑性があることはもちろん大切です。しかし話し方・伝え方一つから、あなたの人間性が丸見えになっていることにお気づきですか。 言葉だけでカッコいいことを言っても、そうは見えないことがあるということです。ましてや、そもそも面接官はあなたたちの話す内容を疑ってかかる傾向にありますから、ここにも何とか工夫をすべきポイントがあります。
詳しいことは、こちらに連載してきた『面接対策第一弾から第六弾』までを復習していただくとして、忘れてほしくない大事なことを一つだけ申し上げます。
”できることを言語化し、面接官に提示してきましたか?”
結果が出せないと悩んでいる方は、おそらく、”できること”ではなく、”したいこと”だけを、まとまりや一貫性がないまま相手に伝えてはいませんか? ご存知のように、かつての企業は、採用してから一人前に育てるという風習がありました。それが終身雇用や年功序列という日本独特の働き方につながっていたのです。
しかしそれらが崩れた今、企業には採用した若者を一人前に育てたくてもできない事情があります。ではどんな学生を採用したいのでしょうか。それは、今すぐにでも即戦力になる学生です。そんな学生を求めているからこそ、厳選採用になってきたのです。 即戦力を認めてもらうためには、”したいことばかり”を言うのは考えものですよ。気持ちは分かりますが、これもまた面接官の気持ちになって客観的に自分のことを考えてみましょう。 再度自分が述べてきたこと、エントリーシートに書いてきたことを振り返り、それは自分が”できること”であるのか、それとも”したいこと”なのかをよく見極めてみてください。
その上で、自分が伝えてきたことが”したいこと”ではなく、”できること”であった場合、それをきちんと自ら証明できたかとうかを振り返ってみましょう。 「エピソードとして、ちゃんと具体例は述べてきたけどなあ。。。」 と思ったとしても、ダメ。言葉だけでは伝わらないもっと大事なものがあります。それは、
”何を言うかよりも、どう見えるか、どう聞こえるか”。
何を言うか=言葉
どう見えるか=あなたの表情、態度、みだしなみ
どう聞こえるか=声の力、声音など
先に述べた身だしなみや目つき一つをとっても、あなたが話す内容と、あなたの雰囲気がリンクしていることをどうかお忘れなく。それができて、はじめて、あなたは自分ができることを面接官に提示していることになるのです。 再度、鏡を見て、 「○○大学○○学部4年、○○○○と申します。本日はよろしくお願いします」 という練習を何度もしてみましょう。無意識にやってしまうと、きっと疲れが丸見えです。だからこそしっかり意識をして、挨拶をします。”今日こそ自分をしっかり受け入れてもらえるために挨拶するぞ”って。
挨拶こそ、昔も今もそしてきっと未来も、人間関係を築くきっかけをつかむものだと私は思います。面接とは、単なるお見合いの場ではなく、この面接から既に仕事が始まっていると考えていただませんか?それができたら、挨拶をきっと頑張ることができると信じています。
心ならずも、まだまだ先が見えないあなたへ
「新卒を採用する件数は、昨年と比べてそれほど変わりはありません。しかし、一社あたりの採用人数が限りなく減っているのが今年の問題です。」
また、これもつい先日のこと、ある大学関係者からは、
「自分が進路指導に関わってきたここ数年、こんなに厳しい時代はありませんでした」
とのこと。
いかに今年が厳選採用であるか、このお二人の言葉でもお分かりですよね。
しかし前者の方は、こうも付け加えられました。
「それでも企業はまだまだ学生を欲しがっているのです。学生がそんな企業に見向きもしないのが問題なのです」
と。
ズバリ言い換えれば、みなさん、大手志向の気持ちがまだまだ続いているのではないでしょうか。大手だからこそ、採用人数を限りなく絞っていることは、もうみなさんならお分かりですよね。しかし、中小企業は、それほど多くの学生を採ることはできなくても、優秀な企業がまだまだ学生を探していることをご存知でしょうか。
考えてみたことがありますか? 例えば、大手自動車メーカー。一台の自動車をつくるためには、その会社だけですべてを作っているのではなく、たくさんの下請け会社があって成り立っているのです。その下請け会社の中には、テレビコマーシャルになど出てくるような有名企業はないかもしれませんが、よく調べてみてください。その業界では、世界に名の売れているところもたくさんあります。海外で働きたいから商社や有名企業だとしたら、中小企業でも海外に出ている会社はたくさんあります。
問題は、プライドかもしれませんね。誰もが憧れる有名大学の学生であればあるだけ、名の知れた有名企業でなければだめだと、本人も回りも思っているのかもしれません。 そのお気持ちはよく分かります。有名大学に入るために、有名な塾に入り、全力で頑張ってきたのですもの。それなのに就職活動で、自分だけがネームバリューのない会社では、あなただけでなく、ご両親ももしかしたら辛いとおっしゃるかもしれません。
だけど、誰のためでもなくあなたのためによく考えてみてください。このまま大手企業から内定がとれなかったら、留年するのかそれとも大学院に進学するのかどうか。目的をもって進学するならその選択肢もありだと思います。しかし、来年もう一度、大手企業を目指すぞというお気持ちで、留年や進学をなさるのは、考えを改めたほうが私はいいと思います。
それこそ大きなおせっかいというものですが、こう申し上げるのは、たくさんの学生を知っているからです。4月末や5月末くらいで、「両親からも承諾を得ました」、「教授から、君のような学生こそ、大学院でもっと勉強するべきだと言われ、とても嬉しくなりました」とおっしゃりながら、その年の就職活動を早々とやめてしまった学生の翌年の結果は、決して良くなってはいないことのほうが多いことを知っているからです。あなたにとって働くということが何であるのかをよく考えてみてください。働くことは、大手も中小も同じことなのです。仕事の内容もほぼ同じと言っても過言ではありません。友人やご親戚に会社名を言うことが憚られても、それは本当に自分のためなのでしょうか。人前での見栄のために、自分の将来を見誤らないでほしいと願っています。
働き始めて、一生懸命頑張って、社長やお客様にしっかり認めてもらえるようになったとき、もしも同じように「ああー、これが大企業ならなあ」と思うようなら、そのときに転職をなさればいいのです。今は昔のように終身雇用の時代ではありませんから、実力があれば、自分の力で大きなチャンスをつかむことができるはずです。
新卒だからこそ、まだ入ることのできる企業はあります。こだわりがあるがゆえに、今のあなたが停滞しているとしたら、このことをどうか考えてみてくださいね。 これから先の長い人生、チャンスは今だけではありません。しっかり耐えて、実力をつけ、「今に見ていろ!」という根性を持ってもいいのではないかと私は思いますがいかがでしょうか。
頑張って内定をとったあなたへ
来年4月になる以前から、企業によっては内定者だけの懇談会が頻繁に開かれたり、内定者だけのアルバイトがはじまるところもあるでしょう。そんなときも、いつもあなたは企業から見られてチェックされていることを忘れないでください。
あなたの社会性も実力も、面接時で見えたとおりの学生であったのか、それとも大失敗の採用であったのか!言葉は悪いですが、こんなふうに企業はあなたたちをまだ見ているのです。
そのためにどうすればいいんでしょうか。それは、仮に、お酒の入った席でもくだけすぎないこと、ふざけすぎないこと。勉強を怠らないこと。自分をさらに向上させる気持ちを忘れないこと。 これらが大切だと思います。
うさぎと亀の寓話にあるように、先についたからとなまけてグーグー寝ていては、必死に努力を重ねてきた亀にいつのまにか追い越されてしまいます
まとめ
約一年という長い間、この私の連載を継続して読んでくださりありがとうござました。就職活動は、どうしても一喜一憂するものですが、私のこの連載が、あなたの喜びを少しでも大きくすることができたなら、そしてあなたの悲しみや憂鬱を少しでも取り除くことができたなら、心から嬉しく思います。
先日、ある女子学生から嬉しいメールをいただきました。
「一次面接が全然通過できず、もう就職活動をやめてしまおうと思っているとき、先生の「坪田まり子の就職塾2011」を見つけました。読んでいくうちに、気持ちが明るくなって、そうなるとあれほど行くのが辛かった面接が楽しく思えるようになって、おかげさまで内定がもらえました」って。
私にとってこんなに嬉しいことはありません。大学生活までとは違い、就職活動から先は、学力だけでは通用せず、人間の本来の魅力が嫌がおうにも試され、選別されていきます。だからこそ、相手に対する敬意をもって活動することが大切なのです。私のこの連載も、そして先にご紹介した私の単行本「面接で『特A』をとる!」(静山社文庫)も、よくあるマニュアルではありません
すべてが、自分自身を高めるため、見直すために分かって欲しいこと、自分で見直す方法・やり方がわかる内容にしてきたつもりですがいかがでしたでしょうか。
大手であるかないかなんて、本当はどうでもいいことなのではないかと私は思います。あなたがこの世に生まれてきて、あなたが背伸びをすることなく、不必要に無理することなく、今のあなたを丸ごと「ぜひわが社へいらしてください」と受け入れていただく人や企業にめぐり逢えることが真の幸せ、真の到達地点だと私は思います。
就職活動を通して、結果が出た人もまだこれからの人も、きっと、人は一人では生きられないことに気がついたのではないでしょうか。だからこそ、周囲に感謝する気持ちをもちましょう。どんなに小さなこと、ささやかなことでも、「ありがとうございます」って言葉を素直に言える人になりましょう。そんなあなたのことを、周りが見逃すはずはないと私は信じています。だって、鬼のような面接官にも心があるからです。人情があるからですよ。血の通った人間ですもの。心がドキドキするような、琴線にふれるようなそんな相手と互いにめぐり合いたいものです。
どうかみなさんが心身ともにご健康で、明るい未来を築かれますよう、切に願っています。そして、心から、心から応援しています。
一年間、ご愛読くださり本当にありがとうございました。
私こそ、みなさんとの出逢いに心から感謝を込めて。
坪田まり子