坪田まりこの就職塾2011

坪田まりこの就職塾2011 第11回
面接対策第六弾「ちょっと待って。今のままでいいですか?見直すべきことはしっかり見直し速やかに改善しよう」

はじめに

みなさん、こんにちは。

5月といえば新緑。目にも鮮やかな木々の緑って本当に気持ちがいいですね。何となく心が洗われるようなそんな清清しさを感じるのは私だけでしょうか。  
つい先日、都内の某大学で私の本「面接で『特A』をとる!」の出版記念特別講演がありました。就職活動中の学生ばかりかと思いきや、一年生、二年生の参加も多々いらっしゃいました。おそらく先輩たちやご兄弟の厳しさを知った上で、早くから何かをはじめようという意識をもった方々だと思います。  終了後、参加学生と触れ合う機会があり、ある男子学生がこう話しかけてくださいました。

「僕は4年生ですが、おかげさまで既に希望先から内定をいただきました。」って。
私はもちろん「おめでとう」と申し上げた上で、「おかげさまというのは??」って、遠慮交じりに尋ねてみました。
「大学生協のサイトにある坪田先生の就職塾2011のおかげだと思っています」
「坪田先生の就職塾2011、第一回目から毎月楽しみに拝見していました。内容がとても好きで、非常に有意義だったので、坪田まり子って一体どんな人だろうと思っていました。今回、学内で特別講演があると知り、参加をしました」って。
私にとってこんなに嬉しいほめ言葉はありませんでした。涙が出るくらい嬉しく思いました。
ただ、ふと心配になって、
「でも今日、講演ではじめて私の話をお聞きになり、そして私の顔や姿、声を聞いて、あなたがイメージしていた私と違いすぎませんでしたか?」
と恐る恐る尋ねてみました。
にっこり笑ったその彼はすかさず
「いいえ。坪田先生のお話もお姿もイメージどおりでした!お目にかかれて本当によかったです」
 って、しっかり握手をしてくださいました。

本当に嬉しいです。未来ある学生をとことん応援したと思って講師を始めた私。今年で約10年目のこのタイミングで、学生向けの私の本を出版する機会に恵まれました。おかげさまで全国の学生さんが気軽に読んでくださっているようです。単行本ではありますが、この時期、一番大切なこと、”気持ちで負けないで””決してあきらめないで”というメンタル面のことをもしっかり盛り込んだ一冊です。よろしければこちらの就職塾同様にご活用いただけましたら幸いです。

選考はどこまで進んでいますか?

こんな言い方をすれば、ショックで答えられない方も読者の方の中にはいらっしゃるかもしれません。しかし、絶対にあきらめないで企業からご縁をいただくためには、自分がどの段階でチャンスを逃しているのかをしっかり見極める必要があるのです。

まず一次面接から悩んでいらっしゃる方。次のことを自問自答してみてください。
  • ”面接が苦手”と始まる前から決め込んでいないか
  • ドアをノックする際”どうか優しい面接官でありますように””圧迫面接ではありませんように”って考えていないか
  • 入室前のわずかな時間に、自己PRや志望動機を繰り返し読み、頭の中に叩き込んでいないか
  • 入室直前、鏡を見ることを怠っていないか
最初の二つについて。気持ちはよく分かりますが、こんなことをその場で考えているようでは、面接がうまくいかなくても仕方がありません。  
どうしてその正反対の気持ちになれませんか? 「今日が面接だ!やっとあの企業の面接にいけるんだね!」って。  

これまでの連載の中でも申し上げてきたように、面接とは嫌がおうにも評価をされるところです。4段階評価だとしたら、当然DよりCが上、CよりBが上、BよりA評価が上にあたります。一次面接通過ラインは、この4段階評価の場合にはBとCの間でなければなりません
この厳選採用という厳しさの中では、万が一のとき内定取り消しにならないためにはAでもまだ足りません。『特A』評価をとりたいものです。そのためにもまず一次面接をとりあえず通過するためには、C:「どちらでもいい」という評価ではなく、B:「採用したい」でなければならないということです。実は年々思うことですが、最近C評価の学生が多すぎます!どうしてB評価の学生が少なくなったのでしょうか。  
それは、大人しすぎるからでしょう。同時に、皆が同じようなことを話すからだと思います。  

10年前に比べて、尖った学生が少なくなりました。尖ったという意味は、悪く言えば、髪の毛の色もスーツの着こなしも自分流、話し方も敬語がなっていなかったり、生意気なことを述べたりというイメージです。かつてはこんなタイプの学生が少なからずいらしたのです。  
しかし昨今は、髪の毛の色もリクルートスーツの着こなしも、きちんとしている人が多いと思います。態度も決して悪くない。敬語もまあまあ普通程度には話すことができる。当然生意気には見えない学生が増えてきました。これらは社会性という意味では間違っていません。とても大切なことではあります。  

問題は、マニュアルどおりに答えるということそして自己主張が弱くなっているということ声が小さくて大人しすぎるということではないでしょうか。  マニュアルが悪いと申し上げるつもりはありません。しかし、なぜ“圧迫された”と学生が感じるかといえば、あなたの答えでは面接官が分からなかったからです。分からないし納得できないから、あなたが答えたことに対して、いろんな角度から「なぜですか?」「それはどういう意味ですか?」と質問されることになるのです

等身大の自分であれということ

今から3年前のこと。誰もが憧れる某有名大学の女子学生がいらっしゃいました。その学生は英語が大得意でしたので、海運を第一志望にしていました。その学生の質疑応答は素晴らしく、一般論ではなく、そのほとんどが海運事業に通用する仕事レベルの内容でした。しかし私はその学生との模擬面接後、すぐにこう申し上げました

「今日のあなたのお答えは、自己PRも含めたすべてが、あなた自身のお答えではないと思いますが、違いますか?」

その女子学生のぎょっとした表情を今でもはっきり覚えています。一瞬沈黙があったあと、今度はワッと泣き出しました。

泣きながら、「どうしてそれが分かったんですか?」と彼女は私に尋ねました。聞けば、すべての答えが先輩からアドバイスされたことだったようです。彼女は自分自身になぜか自信がなく、大学3年生になってすぐ、大学で一流企業に入社した300人に先輩訪問をなさったそうです。そこで聞いたこと、アドバイスされたことをすべてメモにとり、面接のたびに、自分の言葉で語るのではなく、先輩から聞いたことばかりを述べてきたそうです。その結果、海運はもちろん、私との模擬面接までの間、最も選考が進んだのは2次面接までで、それ以上へは一度も上がったことがないとのことでした。

企業が今、マニュアルにとらわれ過ぎている学生が増えたと憂いているのも、まさにこの状態のことを言います。先輩訪問だけを参考にするのではなく、いまや成功した学生に関する情報収集は、本からでもネットからでもどこからでもできます。しかし、企業が見たい、知りたいのは成功した先輩の事例なんかではなく、あなたご自身のことなのです。あなたが優秀でも優秀でなくても、そのあなたに少しでも何か可能性をみつけたときに、企業はあなたを選考に残すのです。

では、なぜ私が先の女子学生のことを見抜いたか分かりますか?
それは彼女の答えに対し、私が“さらに”追求したとき、つじつまの合わない答えをしたからです。一段階目の質問はまだ答えられました。例えば、

学生:「赤い色が好きです」
面接官:「どうしてですか?」
学生:「赤は情熱的でパワーあふれる色だと思うからです」(なぜか得意げに答える学生の表情)
*注釈:この企業が求める人物像は、情熱的でパワーあふれる人物です。
面接官:「なぜ情熱的でパワーあふれる色が好きなのですか?」
学生:「は、はい、そ、それは。。。」

簡単に説明するとこんなイメージです。

前出の彼女の場合、このように深く追求したとき、頭のよい学生でしたので、これほどひどい失敗はもちろんしていません。なんとか無難にこなせたといっても過言ではありませんが、ただ一つ問題がありました。質問に答えるときの彼女の目に、活き活きした光が見えなかったこと、表情が乏しかったことです。私に追求されて考えているときの彼女の表情は、覚えてきたことを一生懸命思い出そうとしているそのものであり、どの一つをとっても、その場で考えようとしない姿が私にはありありと見えたように感じました。

そのとき彼女は、今までの時間が、300人から聞いた話がすべて無駄になった、悔しいとおっしゃいましたが、私はそうではないとお話ししました。300人に自ら進んで話を聞きに行ったことも、たくさんのアドバイスを受けて考えたことも、何もしない学生よりもはるかに一歩も二歩も進んでいると。だけど等身大の自分のことを置き忘れてしまったことが彼女の問題だったのです。どんなに素晴らしい自己PRも完璧な志望動機も、それらはすべて先輩たちの事例であり、彼女の事例ではないことを勘違いしてしまっただけなのです。

 それから彼女は必死に活動をなさった結果、残念ながら海運とはご縁がありませんでしたが、超一流の外資系企業の総合職として内定を得ました。秋以降だったか、彼女と再度お話しする機会がありました。わざわざお礼を言いに来てくださったときのことです。大きな成長が私には見えてとても嬉しかった!彼女自身の表情や言葉から、等身大の彼女の姿がはっきりと分かりました。だけど、かつての自信のなかった彼女ではありませんでした。就職活動でさんざん悔し涙を流したからこそ、周囲に対する感謝の気持ちと今の自分に自信が持てるようになった立派なプレ社会人の姿でした。

 「坪田先生、社会人になっても人真似ではなく、ありのままの自分の姿で何事にもチャレンジしていきます!それをはっきり指摘してくださった坪田先生に心から感謝しています。これからはもう迷いません!ありがとうござました」

私にとって最高のメッセージでした。
人との出逢いっていいものだと思いませんか?今、悩みの真っ最中の人には、とてもそんな風に感じることはできないかもしれませんが、偉そうなことをいつも申し上げている私だって今でも試行錯誤の連続なのです。でも私には一つだけ信じて決して疑わない考え方があります。

“人は出逢うべき人には必ず出逢える。それも一瞬遅すぎず、早過ぎないうちに”

という言葉、教えに出逢ったときから、私は毎回、いえその瞬間を精一杯後悔しないよう頑張っています。
講演のしすぎで声が疲労して、これ以上声を出すなとドクターストップがかかったときでさえも、目の前に私の話を聞いてくださる学生や社会人がいるときには、やはり声を振り絞って話をしている私です。花粉症の私にとってこの時期は、話しながら、鼻水がタラリとこぼれることもあります。花粉の影響で目が充血して真っ赤でも、それでも今、私に出来ることを一生懸命お話しているつもりです。

仕事だからではありません。お役に立ちたいからです。
わざわざ私の話を聞きに来てくださったみんながいることが本当に、嬉しいからです。そして自分のことをしっかり受け止めてほしいと誰よりも思っているからだと思います。
そんな毎日を今日も明日も過ごしたら、きっと誰かに出逢えると信じてきました。だから、この連載で、私は読者のみなさんに出逢えたのですよね。
ねえ、みなさん。 この考え方って、就職活動中のあなたたちもまったく同じだと思いませんか?  
先月号、第10回面接対策第五弾でもお伝えしたように、書類選考や筆記試験に通過したから、面接に行けたのです。わざわざ面接官はそのために、時間を割き、あなたに逢いたいと心から思い、面接室であなたを待ってくれています。  

そしてあなたも、私と同じように、いえ私以上に、今日こそ自分を受け入れてもらいたいと願っていらっしゃるはずです。  
面接で緊張することも分かります。  
だけどどうか忘れないでください。あなたの話を聞いてくれる人がいるということの嬉しさ、ありがたさを。だから上がっても、緊張しても、あなたはあなたのことを一生懸命に面接官にお伝えすればいいだけなのです。もしもアルバイトで頑張っているあなたなら、絶対に出来るはずなのです。アルバイト先の店長に褒められるためだけでなく、どうかご自分のために、しっかり誠意を見せて、笑顔で明るく面接を乗り切って欲しいと願っています。

明るく元気であれということ

学生からよく質問を受けることの一つに、「どの程度の笑顔がいいのか?」というものがあります。  
それこそみなさんはいかが思われますか? 確かに、笑顔にはいろんな種類があります。はにかんだ笑顔、すねた笑顔、媚びた笑顔、泣き笑い、大笑いなど。  

面接室のドアを開けたその瞬間から面接官は学生の表情を見ているものです。大笑いして入るのはちょっと変。だけどすねた笑顔も媚びた笑顔も論外です。はにかんだ笑顔でもだめ。面接官に対して、ここに来れたことに対する喜びと感謝の気持ちを、しっかり表現すべきだと私は思うからです。  

鏡を見てにっこり笑ってみてくださいますか。あなた自身が自分の笑顔を見て、嬉しくなるかどうか。そうだとしたら、その笑顔で大丈夫。入室前のわずかな時間に鏡を見て欲しいのは、ブラウスやシャツの襟元を見直すためだけでなく、ネクタイのゆがみをチェックするだけでもなく、鏡に映る自分を面接官の目で確認してほしいからです。  

あなたが面接官であれば、今、目の前に映っているあなたを採用したいと思うかどうかを、まずあなた自身が面接室への入室前に確認をすることをどうか忘れないでください。
『社会性』とは、明るくて元気なことも含まれると私は考えています。性格的に、生まれつきその反対の性格の人には厳しいことを申し上げるようですが、そんな性格の人でも明るく元気になることは出来るとも思っています。  
笑えないではなく、自分でチャンスをつかむために、勇気を出して、あなたのほうからぜひ面接官に笑顔を向ける意識が必要です。その意識を持てることが大人の証、社会性ではないでしょうか。  

小さな子供にはそれは無理です。笑いたくないから笑わない。それも子供だから仕方のないことでしょう。でも大人はどうでしょうか。目の前にお客様がいらしたら、笑顔で「いらっしゃいませ」「ありがとうございます」と言わなければならないこと。大学4年生、短大2年生、修士2年生はもう充分に大人。もうみなさんには分かっていただけますよね。  

面接とはあなたを採用した後、どんな人間関係を築くことができる学生かどうかをも見極められる場所なのです。上司や先輩と良好な関係が築けるかどうかの観点は、そのままお客様との関係にも共通することですよ。あなたが総合職希望でも一般職希望でもまったく同じ観点だということをどうか忘れないでください。 明るく元気な笑顔で、もう一歩、勇気を出して前進しましょう!
 
面接官に受け入れてもらう前に、自分で自分自身のことをまず受け入れることが大切です。 ありのままの自分をもう一度見直し、ダメなところを変える知恵を持ち合わせると同時に、決して変えてはならないあなた自身の軸を大切して、どうか頑張ってくださいね。

まとめ

昨年7月から始まったこの連載も、いよいよ来月が最終回。心を込めて、来月も頑張る所存です。

また元気にお目にかかりましょう。

坪田まり子